障害者グループホームの食事|「痩せてよかった」と思う前に確かめたいこと
グループホームを探すとき、多くのご家族が資料で確認するのは「食事の提供あり」という一行です。
ほとんどのホームに、この一行は付いています。だから、そこで安心して次の項目に移ってしまう。私たちもそうでした。
けれど実際に暮らしはじめてから効いてくるのは、食事があるかどうかではなく、それがどういう形で出てくるかのほうです。そして、もし食事に問題があったとき、家族がいちばん気づきにくい理由があります。
この記事は、不安をあおるために書いたものではありません。ただ、私たち自身が見落としていた「気づけない構造」について、正直に書いておきたいと思いました。
障害福祉サービスの制度は、市区町村によって運用が異なり、年度ごとに改定されます。このページは全国共通の考え方を整理したものです。ご本人に当てはまる取り扱いは、必ずお住まいの市区町村の障がい福祉担当窓口、または担当の相談支援専門員にご確認ください。
食事の出し方には、大きく3つの形があります
見学で「お食事はどうされていますか」と聞くと、どのホームも「朝晩お出ししています」と答えます。そこからもう一歩踏み込むと、実際には次のように分かれます。
① 一から手作りする
世話人がホームの台所で調理します。献立も、その日の様子に合わせて調整しやすい形です。手間はいちばんかかります。
② 調理済みのものを温めて、お皿に盛り付ける
栄養士が献立を設計した食材が届き、ホームで温めて、器に盛って出します。いま、いちばん多い形です。
「手作りではない」と聞くと構えてしまうかもしれませんが、これは事業所の姿勢の問題というより、人手の問題です。夕方の忙しい時間に、数人分の食事を一から作り、同時に他の支援もこなすのは簡単ではありません。栄養の管理という点ではむしろ安定します。
③ お弁当が届く
外部から配達されたものを、そのままお渡しします。器に移すかどうかもホームによって違います。
そして現実には、朝食が菓子パンとパックのジュース、というホームも存在します。
どれが良い・悪い、ではありません
大事なのは、この3つは「食事の提供あり」という同じ一行にまとめられてしまうということです。
ご本人が食べることを楽しみにしている方なら、ここは暮らしの満足度を大きく左右します。逆に、食にこだわりが少ない方なら、他の条件を優先してよい部分でもあります。まず、違いがあることを知っておく。それだけで、見学のときの質問が変わります。
2024年に、食事をめぐる大きな事案がありました
2024年6月、障害者グループホームを全国展開していた事業者が、利用者から食材費を実際にかかった額より多く集めていたとして、愛知県と名古屋市から5事業所の指定取消処分を受けました。
厚生労働省は組織的な関与があったと判断し、いわゆる連座制を適用。12都県のおよそ99事業所が指定の更新を受けられなくなりました。影響を受けた利用者は約1,700人、過大徴収の総額はおよそ2億990万円と報じられています。
この件は、障害者虐待防止法でいう「経済的虐待」にあたると位置づけられました。
ここで注目したいのは処分の重さではなく、なぜ長い間、誰も気づかなかったのかのほうです。
なぜ、家族は気づけないのか
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいことです。
体重が減ると、親は喜んでしまう
障害のあるお子さんは、体重が増えやすい傾向があります。間食が止まらない、運動の機会が少ない、薬の影響がある——理由はさまざまですが、多くの親御さんが「太りすぎ」を心配しながら暮らしています。
だから、ホームに入ってから体重が落ちると、こう思います。
「よかった。ちゃんと健康管理してもらえているんだ」
「間食しなくなったんだな」
これは油断でも無関心でもありません。ずっと心配してきたことが解消されたように見えるから、そう読んでしまう。私たちも、同じ立場なら同じように思ったはずです。
けれど、体重が落ちる理由は他にもあり得ます。食事の量が足りていないという理由も、その一つです。
ご本人は、言葉で伝えられないことがある
「ごはんが少ない」と説明できる方ばかりではありません。伝えられない場合、変化は行動に出ます。
- 週末に帰ってきたときの機嫌が悪い
- 落ち着かない、興奮しやすい
- 家に帰るとよく食べる
ところがこれらは、「いつものこと」に見えてしまう。もともと波のあるお子さんなら、なおさらです。
週末だけ帰る形だと、変化が見えにくい
月曜から金曜はホームと日中活動先、週末だけ家に帰る——という過ごし方は、ごく一般的です。けれどこの形だと、ゆっくり進む変化には気づきにくい。数か月かけて少しずつ痩せていく変化は、毎週会っていても分からないものです。
職員が声を上げるとは限らない
先ほどの事案でも、外から分かったきっかけは内部からの告発でした。働いている人が問題に気づいても、それを外に出すのは簡単ではありません。ご本人も家族も、外からは見えない。この構造が、発覚を遅らせます。
言葉ではなく、事実で確かめる
当サイトの見学のポイントの記事でも書いていることですが、確かめ方は同じです。「ちゃんとやっていますか」と聞いても、意味のある答えは返ってきません。事実として残るものを見ます。
① 献立表の日付を見る
見学のとき、台所や食堂に献立表が貼ってあるか、そしてそれが今の日付かを見てください。何か月も前のまま貼ってあるなら、運用が止まっている可能性があります。
② 実際の食事を見せてもらう
「先週の夕食はどんな内容でしたか」と聞いてみてください。写真を撮って記録しているホームもあります。紙に書いてあることと、実際に出ているものが同じとは限りません。可能なら、食事の時間帯に見学させてもらうのがいちばん確実です。
③ 体重を、家族の側でも記録する
これは入居してからの話ですが、帰宅したときに体重を測って、日付とともに記録しておくことをおすすめします。
減っているか増えているかを見るためではありません。「なんとなくの印象」ではなく数字で見るためです。急に落ちているなら、それは喜ぶ前に理由を確かめるべき変化です。
④ 見たこと/聞いたことを分けて書く
気になることがあったら、自分の目で見たことと、人から聞いたことを分けて記録してください。後から相談支援専門員や行政に相談するとき、この2つが混ざっていない記録は強い材料になります。
⑤ 第三者の情報を見る
WAM NETの「障害福祉サービス等情報公表システム」では事業所の届出情報が確認できます。また、行政処分を受けた事業所は各自治体が公表しています。担当の相談支援専門員は、複数の事業所を実際に見て回っているため、資料には出てこない事情を知っていることがあります。
それでも、誠実な事業所のほうが多い
ここまで読んで、事業所を疑ってかからなければいけないのか、と感じられたかもしれません。そうではありません。
限られた人手のなかで、食事の内容を工夫し、一人ひとりの様子を見ているホームのほうが、はるかに多いというのが実感です。手作りをやめて温めて盛り付ける形にしているホームも、それは手を抜いているのではなく、その分を別の支援に回している場合がほとんどです。
この記事を書いたのは、業界を批判するためではなく、「痩せてよかった」と思ってしまう自分自身の思い込みを、知っておいてほしかったからです。知っていれば、確かめられます。
迷ったときの相談先
気になることがあったとき、家族だけで抱え込む必要はありません。
- 担当の相談支援専門員——まず最初に相談する相手です。事業所との間に入ってもらえます
- お住まいの市区町村の障がい福祉担当窓口——虐待が疑われる場合の通報先でもあります
- 基幹相談支援センター——相談支援専門員がついていない場合は、ここから始められます
「気のせいかもしれない」という段階でも構いません。確かめてから安心するほうが、我慢して見守るよりずっと健全です。
本記事で触れた事案の内容は報道および行政の公表資料にもとづいています。制度の取り扱いや相談窓口はお住まいの地域によって異なりますので、実際のご相談は市区町村の窓口・相談支援専門員へお願いいたします。
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